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2006年06月16日
『医療ミス』

しかし執行猶予がついているので、すぐに医療現場に復帰するとの事。遺族のお気持ちを察すると居たたまれないのと同時に、こいつらにメスを持たせる危険性を司法も医療も真剣に考慮してほしい。
これからますます高齢化が進む。当然手術の件数も増えてくるのが我が国ニッポンの現状だ。
医療ミスに対して私が‘対岸の火事’とは思えず憤りを感じるのは、22年前に私も‘人体実験’された経験があるからだ。
といっても命に関わる深刻な類ではなく‘抜歯’であるが・・・。
大学2年の春、右下の奥歯‘親知らず’が痛んだ。ズキズキと存在感を示した。
近所の歯医者に行くと、そのまま置いといても不要な歯であるし、いずれ歯茎を突き破って生えてくるので早めに抜いておくほうが良いとの町医者の判断。(私の下宿していた右京区鳴滝にあった○○歯科)
しかしここでは抜けないので、と大学病院を紹介された。(ちょっと違和感を感じた)
今にして思うと、ここからシナリオが書かれていたのが分かる。
しかし当時は世間知らずの大学生。町医者を信じきっていた。
世間を渡る知恵は無いが、体力だけは無尽蔵にある20歳の患者は大学病院のインターンにとっては格好の実験台だ。少々の無茶をしても患者は死なんとの判断であろう。これがお年寄りなら抜歯といえども失敗すれば死に至る。
○○大学病院の歯科へ紹介状を持って行くや否や、寝転がった私の椅子には当時の私と同年代と思しき若き医者の卵たちが取り囲むように3~4人集まってきた。見学勉強会を兼ねているらしい。
どうやら今回の実験のメインを務める大学生のボンは、マスクと帽子ををしているが隙間から見える目が完全に泳いでいる。相当怖かったのだろう。しかしもっと怖かったのは今から彼に身を任せる私のほうだ。
歯茎に麻酔が打ち込まれた。
数分で口の周りの感覚が全く無くなった。
そして抜歯が始まった。
とはいえ、ほとんどは歯茎の中に埋もれたままの‘親知らず’だ。
根っこは深いが表面に現われているのは直径5ミリくらいの円状である。
医療用のペンチで引き抜こうにも滑って抜けない。何度もチャレンジを繰り返すたびに鈍い音を立てて滑るペンチを操るボンの額には汗が滲み、目はますます焦りと恐怖で泳ぎまくっている。
隣に付いたベテラン医師がボンに緊迫感を伴った目配せをした。私にバレないと判断したのだろうが、当時から私は人の微妙な機微を観察するのに長けていた。モロバレや。
そして私は口の中を血だらけにされたまま数分間放置された。どうやら作戦会議らしい。
数分だったが数十分に感じた私の元へ、ボンが戻ってきて言った。
震える声で、「す、少し歯茎を切って、広げてから抜歯しますね。歯が埋もれてしまってますから。あっ、でも、ぜ、ぜ、全然痛くないですから安心してください。」とは言うものの、ボンの上ずった声のトーンが私の恐怖心を一層煽る。
実験が再開された。
歯茎と覗きかけている歯の境目に医療用のノミを当てて、両サイドから医療用の金槌でコンコンと叩いて徐々に歯茎を広げる戦法らしい。
麻酔が効いているので痛みは全く無いが、金槌を一振り打つごとに、顎に物凄い衝撃が走る。
このままやったら顎の骨がはずれるんちゃうか~と恐怖がピークに達した時・・・。
やりよったがなぁ~~。
ついにボンがやりよったがなぁ~。
失敗しよったがなぁ~。
当てていたノミが歯と歯茎の間を外れ、私の右ほっぺたの内側に突き刺さったのだッ!!
グエッ!ともギャァ!ともヒィィ!ともつかぬ悲鳴か唸り声か分からんような情けない声をボンが発した。
その瞬間、私の胃袋に大量の自らの血が雪崩れ込んできた。
鉄分特有の嫌な匂いが口の中に充満し、口の外に吹き出す私のAB型血液と、体内に再度戻ってくる私のAB型血液が行き場を失ったかのごとく噴出した。
慌てたのはボンだ。
小走りにベテラン医師を呼びに行き、緊急ミニ手術だ。
そう、私は右ほっぺの裏側を5針も縫う羽目になったのだ。
誰しもデビューはある。
誰しも初例があるのが医者の世界だ。
きっと今頃40代の名医になっていてくれる事を願いつつ20年前の思い出話を閉じる。
有り難う御座居ます、感謝。私を実験台にしてきっと腕を上げたであろう22年前のボン。
有り難う御座居ます、感謝。結構な深い傷だったのに1週間ほどで完治した22年前の私の体力。
有り難う御座居ます、感謝。抜歯程度の医療ミスで済んだ京都での過去。
投稿者 : 浦上俊司| 2006年06月16日 23:12
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